「共感と尊敬と安心」が 信頼関係を生むキーワード

本コラムは、2012年〜2015年まで月刊「FInancial Adviser」(近代セールス社)にて、藤島幸恵が「佐藤かなめ」のペンネームで掲載していたものを転載しております。
※出版社の承諾をえております。

「凄いだけの人」の話は相手の心に入っていかない

先日、新人営業パーソン向けの研修講師をしたのですが、その時に少し困ったことがありました。というのも、冒頭で私がとてもスゴイ人のように紹介されてしまったのです。なぜ困るかというと、いわゆるスゴイ人の話は、素直に聞いてもらえないからです。

「ああ、きっとあの人は特別なのだ、私にはできない」と思われてしまうのです。私は、参加者に「自分もできる」と安心してもらいたかったので、最初の15分は新人の頃の失敗談を延々と話すことにしました。会場の空気はそこで変わったのでホッとしましたが、このエピソードは、私たちの営業トークとも大きな関係があります。

私たちは、FPなり、保険・金融のプロとしてお客さまと接しています。専門的な知識を使い問題解決のお手伝いをするという点で、相手からはスゴイ人と思われている可能性がありますよね。きちんと話を聴いていただくために、そうした「尊敬」は必要なことですが、でも、そればかりだと、親しく深い信頼関係にはなかなか発展しません。

では、どうすればいいのか?
今回は、【共感】【尊敬】【安心】の3つのキーワードで考えてみたいと思います。

【共感】…自己開示して人間的な面を見せる

ある不動産仲介のトップセールスは、ファミリーのお客さまを物件に案内するときに、自分の子どもや奥さまの話をたくさんするそうです。そうすることで共感が得られるし、子供部屋やキッチンの話にも、より広がりが出るからです。また、ある生命保険のトップセールスパーソンはパチンコが大好きなのですが、たまたまお客さまの趣味がパチンコだと分かったときには、「いや〜、実は私も好きなんですよ。この間もね……」と切り出しているそうです。

彼らのように、初対面の人とすぐに仲良くなれる人がいますが、その秘訣は、「でしゃばりすぎない自己開示」にあります。
まず自分の話をすることで、「へぇ、この人は、こういう人なんだ」と、親近感を持ってもらえますし、こちらから自己開示をすることで、相手も自分の話をしてくれるのです。

【尊敬】…相手の知りたいことを教える

私たちFPは、信用されてナンボの商売ですが、皆さんは、「キチンとしていなければならぬ」といった思いに囚われすぎて、完璧さやデキルところを見せようとしすぎていませんか?
人は、自分の知らないことや得することを教えてもらうと、感謝と尊敬の目で相手を見ます。

だから、きちんと正しい知識を身に付け、正確にわかりやすく話すことは大事なのですが、そのときに気をつけなければいけないのは、「上から目線」にならないようにすることです。
以前、私の友人が「新聞や雑誌の相談欄でFPなどの専門家の回答を見ていると、『教えてあげますよ』と最初から見おろしていて、時々腹が立つことがある」と言っていたことがあります。

これは極端な人の反応例かもしれませんが、もしかしたら私自身も、お客様にそう感じさせてしまい、ご縁を手放してしまったケースがあるのかもしれません。

【安心】…欠点やギャップを見せる

皆さんは、怖くて近寄りがたいと思っていた人の意外な一面を発見して、急に親近感が湧いた経験はありませんか?目の前の相手が、欠点もある普通の人間なんだと思えると、安心できますよね。

ただし、ここでいう「ダメなところ」というのは、あくまで人間的な部分のこと。仕事上のミスやお客さまに迷惑をかけるような失敗のことではありません。「仕事はすごくデキルのに、こんなかわいい面もあるんだ」というギャップが、相手との心の距離を縮めるのです。あるいは、「FP」とか「銀行員」とか「営業パーソン」といった職業的な肩書き(尊敬)とは別の、一人の人間としての素の姿が見えて、安心するわけですね。

まとめ

信頼関係というのは、会ってすぐにできるものではありません。【共感】と【尊敬】と【安心】の3つのバランスと、熱心さ一生懸命さや思いやり、約束を守る等の当たり前の行動や言動により築かれていきます。私たち専門家の場合は、幸い、尊敬の部分はクリアできているわけですから、共感と安心の部分を心がけて話していくと、お客様との関係も変わってくると思います。

(初出)月刊「FInancial Adviser」(近代セールス社発行)