≪重要事項説明≫がつまらない人は他の説明もつまらない!

本コラムは、2012年〜2015年まで月刊「FInancial Adviser」(近代セールス社)にて、藤島幸恵が「佐藤かなめ」のペンネームで掲載していたものを11話のみ期間限定特別掲載中!下記コラムを一部収載し、バージョンアップさせた書籍を製作中です。 こうご期待!

2012年7月寄稿分

自分がお客さまの立場になってみると、改めて気づくことがあります。

私は、ここ数年の間に、2つの会社から投資用ワンルームマンションを購入しました。どちらも購入時に、重要事項の長~い説明を聞いたのですが、A社で説明を聞いたときは長くて苦痛だったのに、B社のときは笑いもあって、あっという間に終わりました。所要時間はほぼ同じだったのに、です。

では、その違いは、どこにあるのだろう?――というのが、今回のテーマです。

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× 重要事項説明はつまらなくても仕方ない
○ 営業側の意識や工夫次第で楽しい時間になる
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金融商品でも「重要事項説明」が義務づけられていますから、皆さんもお客様に対して話す機会が常にあると思います。

そこで、質問です。

「重要事項説明は、やらなければいけないことだし、元々面白くないものだから、つまらなくても仕方がない」と思っていませんか?営業マンの心がけや、やり方次第で、重要事項説明は、苦痛な時間にも、楽しい時間にもなります。というよりも、重要事項は単なる確認作業ではないし、「重要事項説明はつまらなくても仕方ない」と考えている営業マンは、他のすべての説明もつまらないはずです。なぜなら、金融商品の説明自体が面白いものではないからです。

今回は、意外と気づいていないこの部分を、皆さんと一緒に考えていきましょう。

B社の重要事項説明を短く感じた理由

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× 重要事項説明は、ゴール後の単なる説明
○ 重要事項説明は、ゴール直前の最終段階
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冒頭に書いた、B社と契約を交わしたときのシチュエーションを順番に列挙してみます。
・営業マンが、同席する人全員に名刺交換をうながし、ちょっとした紹介をした。場の雰囲気作りをしてから説明を始めた。
・営業マンが、途中でお茶からコーヒーに飲み物を変えて、気分を変えてくれた。
・書類のしかるべき場所に附箋が貼ってあり、サインする場所には鉛筆で○がついていた。
・説明の中にも笑いがあった。
・疲れてきた頃に「後、これとこれだけですからね」と終了時間をさりげなく教えてくれた。

不動産の売買契約の経験がある方はおわかりと思いますが、とにかく書類が多くて長丁場になります。このとき、売主さんは業者の方だったので、鉛筆で○がついているのは、慣れてない買主(私)の書類だけでした。私は、営業の立場でも観察していたので、その細やかな気遣いに感動すら覚え、お手本にしたいと思いました。契約よりも営業マンの動きを目で追っていました(笑)。
こうして考えてみると、やはりキーマンは営業側であることがよくわかると思います。

A社の営業マンが《既に決まっている話だから……》と淡々とこなした重要事項説明を、B社の営業マンは《契約完了してお礼を言うまで気を抜かなかった》。そこに決定的な差があるのではないでしょうか?

A社の営業マンは、重要事項説明をゴール後だと思って安心して、ダラダラと話してしまったので、受け手側を飽きさせてしまった。反対に、B社の営業マンは、契約のクライマックスと捉え、飽きさせない工夫を随所にちりばめながら最後まで気持ちよく契約させてくれました。とても簡単なことですが、この捉え方の違いが、その後の行動を変えているのではないかと思います。実は私自身も、この事実に気づいてから、重要事項説明のやり方がハッキリ変わったのです。

重要事項説明はクロージングである

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× 単なる重要事項の確認として行う
○ これさえもクロージングの一部にする
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ここで、また質問です。

重要事項説明が義務付けられたとき、私もそうですが、ほとんどの営業マンは「仕方なくやることになった」という感覚だったと思います。では、その中で、「どうしたらお客様を退屈させずに話せるか?」と相手目線で、飽きさせない工夫を考えた方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?

ちなみに、私の所属組織では、飽きずに集中してもらえる話し方について、チームで話し合いをしました。当時の上司がとても優秀な人で、最初から重要事項説明の捉え方をわかっていたのです。「それをどうやってクロージングに盛り込むか?」というテーマで、ロープレ大会まで行っていました。そもそも、私がなぜこのテーマに書こうと思ったかというと、先日、初対面の人から「重要事項説明を聞かされるのは本当につまらないね」という感想を聞いたからです。

たしかに、営業側が「やらなければいけないから仕方なく」という雰囲気では、お客様が楽しいわけがありません。でも、考え方を変えてみると、義務化されてやらなければいけないことが増えたのは、逆にチャンスとも言えます。誰が聞いてもつまらない話を面白くできたら、差別化できるほどのスキルを持っていることになるし、仕事も楽しくなります。

相手(お客様)にとって、「ダラダラと話されたらつまらない」というのは、すべてのアプローチに通ずることであって、なにも重要事項説明に限ったことではありません。
逆に言えば、一番つまらなくなりそうな重要事項説明を面白く話せる人は、どんな話をしても面白いのです!

【つまらない話を面白く】は営業の基本

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× 相手を飽きさせない = 面白い話をする
○ 相手を飽きさせない = 相手を気遣う
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仲間内でそんなことを話していたら、ある人から「説明の時に、笑いを入れたり、面白い話をするテクニックなんて持っていませんよ」と言われました。う~ん、わかってないですね……。ここで言う《面白い話》というのは、笑わせたり楽しませたりする事だけではありません。

冒頭の例は、不動産売買でした。ほとんどの場合、不動産は買うことが決定してから日にちを決めて、決済の日を迎えます。しかし、金融商品の場合、プレゼン→クロージング→契約を一気に行うこともあり、それだけ時間が長く感じるはずです。例えば、1・5時間の商談の末、「さあ、これからご契約」というときに重要事項説明をしなければなりませんから、もしかしたら、お客様はヘトヘトかもしれません。私の知人は、相手が疲れているなと思ったら、メリハリをつけるためにわざと「トイレに行ってもいいですか?」と尋ね、「戻ってきたら一番大切なところをお話ししますね」と付け加えて席を外すことがあるそうです。

敢えてインターバルを取り、「戻ってきたら一番大切なところを……」と語ることで、相手の興味と集中力を途切れさせないようにしているわけです。また、別の知人は、話の段取りと所要時間を最初に提示しています。「これからご契約ですが、これとこれ……この書類にサインをいただきます。○分ほどで終了しますのでよろしくお願いします」

これは、歯科医院で顔をゆがませている時に、気の利いた先生が「後、これだけで終わりますからね~。1分だけ我慢してくださいね~」と言ってくれるのと似ています。歯科では、何をされているのかわからないし、いつまで苦痛が続くのかわからないので、この一言が不安を取り除いてくれます。私たち営業マンは、お客様に苦痛を与えているわけではないので、例えが悪かったかもしれませんが、いつまで話が続くのかわからないと、次の予定が気になるし、時間も長く感じます。

要するに、気遣いができているかどうか、なのです。

ここまでの長丁場でお疲れだろうな……、大事な話だから集中して聞いていただきたい……と思うから工夫をするわけで、それはまさに、この連載のもう一つの一貫したテーマ【相手の気持ちになって考える】ということです。私自身も、ファーストアプローチから契約締結までの流れを一連のエンターテイメントととらえ、笑いを交えながら進めていきます。その根底には、笑ったり、リラックスして、苦痛を感じることなく話を聞いてもらいたいという思いがあるからです。

話を戻しますが、ご自分の重要事項説明を改善したいと思われた方は、先に紹介したB社の具体例なども参考にしながら、次のようなイメージを持つとよいと思います。重要事項説明は、《マラソンで42km近く走った後に競技場に戻ってきてからのゴール直前の数百m》である――。ゴールテープが目前にあり、ここで転んで失敗しないように、最後に一番大切な事をお伝えするのが重要事項説明だと思ったら、とても気を抜いてはいられないですよね。

(初出)月刊「FInancial Adviser」(近代セールス社発行)