あるIT企業の社長に自分の方向性について相談をしたとき、こんなアドバイスを受けました。
「弱みを克服するのは、20代まででいい。30代以降は強みだけを伸ばしていけばいい」
その意味するところは、《若いときは自分の得意なことがわからないから、いろいろとチャレンジすればいい。その中から自分の強み(得意、好き)がわかってくる。そこからは強みを活かして好きなことをどんどんやれば、自然に高いパフォーマンスを生み出せる》ということだそうです。
私は、彼の言葉を聞いて、気持ちが楽になりました。
苦手を克服しようと努力を重ねることは大切です。しかし、ある程度の年齢になったら、やっとの思いで苦手なことを《平均点》にまで引き上げることよりも、好きで得意なことを向上させるほうが、はるかに生産的です。
楽しんで取り組むから職場の人間関係も良くなります。
得意を知れば仕事がうまくいく
私が受け持っている生保営業マン向けの研修で、こんなことがありました。
研修では、ファーストアプローチから始まって成約に至るまでの一連のプロセスについて、継続的に取り組んだのですが、1年ほど経つと、参加者によって《できる部分》と《できない部分》に、ハッキリと差が出てきました。最初は、できない部分をどうにかしてできるようにしてやりたいと思って、ロープレをしたり、トレースをしたりと手を尽くしましたが、なかなか定着しません。
それどころか、できないことに焦点を当てていたので、参加者は、できない自分を常に感じることになり、余計に苦手な部分をやらなくなるという悪循環に陥ってしまったのです。そこで私は発想を変えることにしました。
セールスの一連のプロセスにおいて、
◎ファーストアプローチ~初回アポイント
◎クロージング
◎年金コンサル
――などのパーツ別にグループをつくり、参加者には自分が得意(好き)だと思うところに入ってもらうことにしました。
各グループでは、それぞれこんなことを話し合います。
1,なぜ好きなのか? どんなところが好きなの?
2,なぜ上手くいっているのか?
3,他の人に教えたいやり方や工夫は何か?
すると、参加者は終始笑顔でチームトークをし、話し合った内容を生き生きと発表してくれました。
どのグループにも共通していたのは、次のような点です。
◎自分の好き(得意)な話は、いろいろな場で積極的にしている。→面談の絶対数が多くなる。
◎その場で断られたとしても切り替えが早い。→そのカテゴリ(例えばアポ取り)に関しては自信があるため。
◎伝えたいポイントが明確である。→好きだから探求しつくしている。
その後、「得意なことだけを極めよう」という方針で営業活動をしてもらったところ、生産性が上がり、それまで苦手だったことにも良い影響が表れるようになりました。
上手くいっていることワーク
現在では、研修の初めのアイスブレイク(緊張を解きほぐすこと)として、【上手くいっていることワーク】をよく取り入れています。自分を認めることで人間関係をよくするワークです。具体的には、最近上手くいっていることを3つ挙げてもらい、発表してもらいます。発表したら周りの人は「イイね~」と認知する――だけです。
人は、自分の上手くいっていることやできていることにフォーカスするとやる気が出ます。やる気は自信になります。そして、自分の良いところに視点を当てると他人の良いところが気になります。
ここで大切なのは《まず自分》だということです。
自分の良いところを認めてあげることから始めます。反対に、自分の足りないところにばかり目が向いていると、自然と、他人の足りないところも気になってしまいます。実は、人間という生き物は、無意識でいると、あれがダメ、これがダメと、《欠けたところ》が気になってしまうのだそうです。
つまり、自分と他人の良い部分を見続けていくためには、そのことを常に強く意識する必要があるということです。皆さんも、自分の良いところ、上手くいっているところに意識的にフォーカスしてください。そして、得意な事を見つけて、日々の仕事を楽しんでほしいと思っています。