断りは怖くない

本コラムは、2012年〜2015年まで月刊「FInancial Adviser」(近代セールス社)にて、藤島幸恵が「佐藤かなめ」のペンネームで掲載していたものを転載しております。
※出版社の承諾をえております。

クロージングの本当の意味

 「最近、クロージングがうまくいかないのです。全然決まらないので、また次もダメなんじゃないかって、自信がなくなってきました……」ある後輩の話です。数ヵ月前に会った時には、「営業が面白くなってきた」と話してくれたのに、つい先日、悲痛な顔で相談してきました。

彼はもともと営業センスも良く、きちんとしたプロセスで、信頼されるコンサルティングをしています。しかし、そんな彼は「クロージングが苦手」だと言います。断られると、その先どうしたらいいのかわからないのだそうです。

なるほど……。「実は自分も同じ」という方は、多いかもしれません。クロージングに苦手意識を持っている人は多く、驚くことにそれを「しない」と言う人もたくさんいるのです。

苦手な理由のほとんどは「断りが怖いから」

ちなみに、インターネットで「クロージング」の意味を調べてみると「商談締結」、「売買取引を完了させること」、「相手に結論をせまる事、その行為」――などの定義が出てきます。

この言葉だけ見ると、ちょっと尻込みしてしまいますね。

しかし、この考え方だと、【クロージング=商談締結】ということになってしまいます。クロージングが苦手な人は《決めなければいけない病》に囚われているので、気が重くなり、焦ります。その結果、当初の思い(志)とは裏腹に、押し付けがましい売り方やお願い営業に走ったり、逆に、何もしない(できない)ようになったりするのでしょう。

では、そんなときには、どうしたらよいのか? 

どうすればよいか?

私は、この連載で何度も書いてきたように、《物事の捉え方などの思考のクセを意識的に変えること》をお勧めします。

そうやって今までと違う見方ができるようになると、自分の心が楽になります。心が楽になると、相手を受け入れて理解しようという余裕も生まれてくるのです。

具体的に言うと、クロージングの定義を「商談締結」ではなく、「完了」「閉幕」「オープニング~クロージング」というふうに捉えると、それは単純に【商談=お客様との一つの物語を終わらせるためにする行為】となります。その名の通り、「クローズさせる」のであれば、必ずしも「今買う。今から始める」という結論にはならないので、営業マンの気持ちも楽になるわけです。

ただし、それはクロージングをしなくてもよい、という話ではありません。

お客様の立場になってみると、営業マンが【必ずクロージングまで展開】しないと、「今は買わない」という選択すらもできないからです。クロージングをせずに何となくフェイドアウトしたお客様とは、良い関係は続けられません。

前出の後輩は、クロージングの際に、「イエス」の返事しか想定していないので、相手からそれ以外の答えが出てきたときに対応できません。考え方に幅がなく、一つの答えに固執するあまり、一生懸命になった分だけ毎回ムダに傷ついていました。彼にアドバイスをするなら、成約せずに商談をクローズした時には、こうすればいいのです。

まずは、お客様が「今は買わない」という選択をした事実だけを受け入れます。その際は、決して自分が否定されたわけではないので、評価判断をしないことが大事です。

次に、なぜその選択をしたのかを冷静に聴きます。ここで相手の本音が出る事も多く、たくさんのヒントをもらえるはずです。何がネックになっているのかがわかったら、そこからもう一度クロージングになるかもしれません。

「もし、○○だったら買うのだけどなあ」といった要望が出てくることもあります。

あるいは、お客様の本当の気持ちに自分が納得できて、あきらめがつくかもしれませんね。でも、それはお客様にとってのタイミングが《今ではなかっただけ》なので、もし可能であれば、次のタイミングをつくればよいのです。率直に、今後どのような関わりをさせていただくのかを相談してみるのもいいと思います。「今は買わない」という選択をされたお客様と、今後どのような関係でつながっていくのかは、とても重要です。どんな形であれニーズが顕在化しているので、近い将来の顧客になる可能性が高いからです。

いずれにしても、営業マンにとって、「今日は決める!」と、強いプラスイメージを持ってクロージングをするのは大切ですが、「クロージング」の意味を「イエス」をもらうだけのためだと思っていたとしたら辛いと思いますよ。

自分も、そして、お客様も……。

(初出)月刊「FInancial Adviser」(近代セールス社発行)